内閣府防災担当の「事業継続ガイドライン第3版」(副題:あらゆる危機的事象を乗り越えるための戦略と対応。平成25年8月改定)では、BCPを、「大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、大事故、サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経営環境の変化など不測の事態が発生しても、重要な事業を中断させない、または中断しても可能な限り短い期間で復旧させるための方針、体制、手順等を示した計画のことを事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)と呼ぶ。」と定義している。
図1-1は、同ガイドラインに掲載されているBCPの概念の説明図です。突発的に被害が発生するリスク(地震、水害、テロなど)を主に想定した場合のものである。
出典:内閣府「事業継続ガイドライン第3版」
図1-1 事業継続計画(BCP)の概念(突発事象型)
図1-1に沿って解説すれば、企業・組織が災害などで大きな被害を受けた場合、何ら対策をしていなければ行政の業務レベルは著しく低下し、ゼロに近くなりかねない。また、その後の回復についても、事前の備えがなければ回復には相当時間がかかるであろう。業務の復旧が時間的な許容限界よりも遅れれば、供給先に対する供給責任を果たすことができず、また、被災地の社会的ニーズにも応えられず、強い批判にさらされる懸念がある。また、復旧が遅れることで、後で復旧したとしても、操業度が100%まで回復できないことも多いと考えられる。
そこで、この問題が発生しないよう、図1の左向きの矢印のように業務の立上げ時間を短縮する事前対策を実施し、かつ、災害発生後の対応を計画しておき、発災後にそれを実行する。また、発災直後の業務レベルが許容範囲を上回るよう維持できるように、事前対策を実施し、かつ、災害発生直後の応急対応を確実にできるよう準備をしておく必要がある。この事前対策はや発災後の対応計画が事業継続計画(BCP)である。
なお、図1では、操業度が100%に回復するパターンを示しているが、同ガイドラインの脚注7にもあるように、例えば大規模災害が発生した場合、平常時よりも需要が増える製品・サービス、あるいは同業他社の被災により一時的に自社への需要が増える製品・サービスもあるので、それに対応するため操業度が100%を上回る可能性もある。
同ガイドラインには、段階的かつ長期間にわたり被害が継続するリスク(新型インフルエンザを含む感染症、水不足、電力不足など)についてのBCPの概念の形のグラフを別に示している(図1-2)。
出典:内閣府「事業継続ガイドライン第3版」
図1-2 事業継続計画(BCP)の概念(段階的・長期駅被害型)
内閣府防災の「中央省庁業務継続ガイドライン」(平成19年6月)に掲載されている業務継続の概念図が、図1-3である。また、地方公共団体のBCPについては、「地震発災時における地方公共団体の業務継続の手引きとその解説」が平成22年4月に内閣府防災担当から公表されているが、その中にもこの図が引用されている。
行政のBCPの特徴としては、業務レベルを平常時の100%を超えるようにすることが想定できる。これは、民間企業に比べて行政組織は他の行政組織からの支援を早急かつ有効に受けられる可能性が高いからである。逆に言えば、円滑な受援を達成する事前の備えが求められるともいえる。
出典:内閣府「中央省庁業務継続ガイドライン」
図1-3 行政の業務継続の概念図
内閣府の「事業継続ガイドライン第3版」には、「BCP策定や維持・更新、事業継続を実現するための予算・資源の確保、事前対策の実施、取組を浸透させるための教育・訓練の実施、点検、継続的な改善などを行う平常時からのマネジメント活動は、事業継続マネジメント(Business Continuity Management、BCM)と呼ばれ、経営レベルの戦略的活動として位置付けられるものである。」との記述がある。