民間企業へのBCPの普及率については、内閣府の調査によれば、BCPの普及率は近年高まってきている。大企業については、図2-1のとおり策定済みの企業が平成23年11月時点で45%を超えており、東日本大震災の発生を受けた関心の高まりがあるとみられる。平成21年度の伸びの要因としては、「強毒型」新型インフルエンザの発生懸念と「弱毒型」新型インフルエンザの発生の影響があったと考えられる。
出展:「企業の事業継続の取組に関する実態調査概要」
(平成23年11月・内閣府)なお、図2-5、図2-6も同じ。
図2-1 企業BCPの策定状況(1)大企業
中堅企業については、図2-2の通り23年度の策定率の伸びは著しいものの、まだ20%を超えた程度である。ただし、「BCPとは何かを知らなかった企業」の割合が19年の61.2%から15.1%へと急減していることは注目に値する。中小企業にとってもBCPに関心を持たざるを得ない状況が広がっているとみられる。
図2-2 企業BCPの策定状況(2)中堅企業
また、図2-3で業種別にみると、普及が進んでいるのは金融・保険業、情報通信業及び建設業等である。金融・保険業については、監督官庁の検査に際しての指導の効果が現れているとみられる。また、建設業については、平成21年度から始まった関東地方整備局の「建設会社における災害時の事業継続力認定制度」の実施の影響もあろう[1]。
図2-3 企業BCPの策定状況(3)業種別
行政組織にどの程度BCPが普及しているかについては、中央政府については、2008年12月の中央防災会議で、すべての中央省庁で首都直下地震向けのBCPの策定が行われていることが報告されており、その状況が継続している。
一方、地方公共団体については、内閣府及び消防庁の調査によれば、平成21年11月段階で、都道府県では、策定済が5団体、策定中が16 団体、市区町村では策定済みが1団体、策定中が169 団体であった(図2-4参照。)ただし、BCPがどのような災害等を想定しているか不明なため[2]、同調査の「地震を想定した業務継続体制」の数字を示したのが図2-5である[3]。これをみると、平成22年1月段階で、都道府県が21%(10都道府県に相当)、市では6%(47団体程度に相当)などであった。BCPの策定済みの団体だけでなく、策定中だが業務継続体制が進んでいる団体も該当と回答したとみられる、なお、東京23区については東京都がBCPを平成20年11月に先行的に策定し、区に策定を働き掛けた結果、比率が高かったと考えられる。
出典:内閣府・消防庁調査
図2-4 都道府県・市町村の業務継続計画の策定状況(平成21年11月時点)
出典:内閣府・消防庁調査
図2-5 地方公共団体の地震を想定した業務継続体制(平成22年1月時点)
ただし、それ以降の地方公共団体の地震対応を含むBCP策定率について、政府による新しい調査結果を承知しない。このため、都道府県の本庁(すなわち、一部の部局のみのBCPを除く)のBCPについて、地震も想定に含むものを、筆者がインターネットの検索で本年8月以降に調査したところ、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟(骨子)、富山、岐阜、愛知、滋賀、京都(指針)、大阪、鳥取、広島、山口、徳島、香川、愛媛、長崎、宮崎の19都府県が策定を公表していることが確認できた。これは、全都道府県の40%に当たる。近年、都道府県でのBCPは、かなり増えてきたが、まだ半分に達していない。
また、これらの都道府県以外で新型インフルエンザ対応のBCPを公表しているところは、岩手県、福島県、茨城県、栃木県、石川県、福井県、三重県、島根県、佐賀県の9県であり、また、ICT部門のBCPを公表しているのが奈良県である。これらを合計すると29都府県であり、都道府県全体の62%に当たる。
なお、ICT部門のBCPについては、総務省が継続的に調査を行っており、表1のようなデータが公表されている。ICT部門のBCPは、全庁的なBCPはなくとも策定されている場合も多い。また、ICT部門特有の情報システム障害の発生に備えたBCPの側面も持つものである特徴もある。
平成19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 | |
---|---|---|---|---|
都道府県 | 6.4% | 21.3% | 31.9% | 34.0% |
市区町村 | 2.3% | 4.1% | 5.8% | 6.5% |
平成19年度 | 20年度 | 21年度 | 22年度 | |
---|---|---|---|---|
都道府県 | 3 | 10 | 15 | 16 |
市区町村 | 41 | 74 | 102 | 113 |
出典「地方自治情報管理概要」(総務省)より策定